ギャラリー広田美術では、2017年4月14日(金)から4月28日(金)まで、狩野宏明展 を開催いたします。
狩野宏明は筑波大学で博士号を取得後、文化庁の海外研修でフィレンツェに2年間滞在、現在は制作をしながら奈良教育大学の准教授として活躍している大変優秀な作家です。
今回狩野が提示しようとしているのは、私たちが生きている物質的世界としての現実と、絵に表された世界との関係性を存在論的に捉え直す試みとしています。「人間にとって現実的ではないとされる夢や空想の世界は、果たして本当に現実ではないと言うことができるか」、また「私が一つの身体を通して知覚している現実は、他者が知覚している現実と同一の世界であると言うことが果たしてできるのだろうか」という問題を自身の作品によって提示し、夢や空想のようなイメージをあくまで現実として描き出そうとしています。夢や空想のようなイメージは人間にとってはシュルレアリスムですが、様々な視点、例えば猫や狩野の作品によく出てくるモチーフの一つであるゴミなども含む他者の視点に立てばレアリスムである可能性は捨てきれません。そこで自身の絵画を(シュル)レアリスムと表記し、現実世界において生々流転するあらゆる物質的存在を一種の旅行団として捉え、それぞれの様々な視点から見られる現実の様相を描き出そうと試みたのが今展覧会の「(シュル)レアリスム旅行団」です。このイメージが現実の複数性と生きる喜びの実感を生み出すきっかけになることを願います、という狩野の大作を含む約10点の新作展です。ぜひご覧いただきます願い申し上げます。