降るような 日和りではない

狩野宏明

2013年制作
194.0×324.0㎝ 油彩、キャンバス 2013年

作家コメント

天候を予想する俗信を着想源としたシリーズです。

気象学が発達した現代において、翌日の天気予報は約80%の確率で当たると言われていますが、7日後の予報となると約65%の的中率だそうです。

ごく小さな要因による大気の変動が、大きな天候の変化をもたらすため、長期にわたる天候の予測は現代の科学でも非常に困難であり、天候、気象は、人間が厳密には予測不可能な壮大な現象として存在し続けています。

過去に目を向けると、日本は古来、この天候を予知するために実に多様な俗信が存在しました。

空や山の様子、風の吹き方や音の聞こえ方など自然現象から予測することもあれば、動物や虫の行動を天候の変化の予兆と考える俗信も青億みられました。

それらの俗信の中には科学根拠に乏しいものも多く、現代では実利的な千恵として使用されることは少ないが、自然界のあらゆる現象から変化の兆しを捉える必要があった時代の俗信の数々は、現代の実生活において感じることの少ない自然界の複雑で躍動的な因果関係の一端を私たちに示してくれる。

本作では、この日本における天候に関する俗信を主要なモチーフとし、そのイメージを絵画作品として視覚化することで、未だ人間や現代科学の力が及ばない複雑さを有する気象と自然界のダイナミックな関連を表現すること目指します。

また、現代において天候、気象は未だ性格な予測が困難な現象であるだけでなく、人的要因によってそれらが変化していることが問題視されていいます。

地球温暖化やヒートアイランド、森林減少などによる世界規模での環境変化が、異常気象の増加の原因として挙げられるようになって久しい。

人間によって予測、制御困難な天候という現象に、私たちは自らの営みによってさらなる変化をもたらしたと言え、天候、気象というテーマを扱うことは、現代の人間の生活と環境の問題を取り扱うこととほぼ等しいとさえ言えます。

したがって、本作では、天候、気象というテーマを通して、人間の予測を超えた自然界の繋がりと多様な因果関係の存在を描き、自然界側から人間世界を捉えなおす契機となるような表現を目指します。