転々と怪火

狩野宏明

2023年制作
50.0×72.7cm/油彩、箔、ペン、白亜下地、綿布、パネル/2023年

作家コメント

ミャンマーの伝統音楽で使用される楽器を主なモチーフとして描いた。

民族音楽を紹介するドキュメンタリー映画を見て、ミャンマー音楽の独特な旋律に魅了された。しかし、情勢が不安定なミャンマーの文化に触れる機会は多いとは言えない。

本作では民族音楽の楽器が空を飛ぶ様子を描くことで、文化の越境や交流を表したかった。それと同時に、画面には箔が所々に貼られているが腐食効果により変色しており、破壊や暴力を連想させる表現を試みた。また、油絵具を剥離材によって溶かし、むき出しになった下地部分にペンでドローイングを加えている。ペンで描いたのは西洋絵画から引用した、嘆き悲しみ苦悩する人々の姿である。

魅惑的な民族音楽のイメージと破壊のヴィジョンの混在によって、世界規模での文化交流と絶え間なく続く争いの現状と歴史を描いた。