財田翔悟

2023年制作
60.6×72.7㎝/綿布、ピグメント、岩絵具、アクリル絵具、箔/2023年

作家コメント

元としているのは現在住んでいる新潟県の海である。
波の様子を切り取り、一見するとなんだかわからないような色合いを用いて制作しているのは自分の感情の表れかもしれない。
海というのは自分の中で身近な存在で何度か絵のモチーフにしてきた。幼いころには親に連れられ、高校時代は海を見ながら通学していた。見ていたのは太平洋側の海。なんとなくではあるが動きがなだらかな印象で今回モチーフにした日本海側の印象とは異なる。
長く住んでいた山形県にも海はある、しかも日本海ではあったのだが、居住地は内陸で海は遠く、見る機会もあまりなかった。その点現在の住まいからは海が近い。感覚としては実家にいた頃に戻ったような距離感である。
ただ見える水面の表情、砂浜に落ちているもの、匂い、音は自分の記憶とは違う。感覚が混濁する印象があった。それでいて当然ながら海ではある。慣れない感覚も懐かしい感覚も訪れる不思議な感覚があった。
その混ざりあう感覚を表現するのに多くのレイヤーが重なり合い、それぞれが見え隠れする研ぎ出しの技法は自分としては相性が良かったように感じる。
もしかすると現在の地域に長く住まえば感覚が変わっていき、絵の色味も変わっていくかもしれない。今はまだこの地域に住むことへの違和感があるのかもしれない。そういった不安や戸惑いが現れた色味なのだろう。