作家コメント
今展覧会のテーマである「龍」から連想したのが、数年前にネットニュース等で話題になった、中国貴州省の村で起きた謎の怪音騒動についてでした。その音は数日間に渡り、獣のうなり声のような重低音で山村に鳴り響き、「まるで龍の鳴き声のようだ」と注目を集め、ニュースを知った多くの人々が村に押し寄せました。インターネット上には、怪音とともに現地に群がる人々の様子が映し出された動画が複数アップされました。音の原因は特定されないまま、さまざまな憶測(地下洞窟から漏れた音である説、天変地異の前触れ説、世界の週末説、等々)が飛び交いました。いわゆるオカルト的なニュースではありましたが、私は当時、妙にその話題が気になってしまい、続報がないか度々ネットで検索していました。しばらくして音の正体は、専門家らが調査した結果「ウズラの一種の鳴き声が山に反響したもの」であるというニュースが流れました。しかしその情報もまた、騒動を収めるためのフェイクだという声も聞かれ、真相はよくわからないまま話題は埋もれていきました。実際のところ、本当に調査の通りだったのかもしれないし、何か別の自然現象だったのかもしれません。しかし、ネット上にアップされたいくつかの動画(それ自体の真偽もまた不明ですが)からは、何かしらの見えない存在や、理解できない事象が起こっているという、ある種の期待感のようなものが伝わってきました。私は何度も映像を見ては思いを巡らし、わくわくしていました。本作は、その村に群がり謎の音を聞く人々のネット画像を参考にして制作したものです。描きながら、そもそも村の大地自体が龍の鱗のようにも見える気がしていました。展覧会風景撮影:松尾宇人
今展覧会のテーマである「龍」から連想したのが、数年前にネットニュース等で話題になっ
た、中国貴州省の村で起きた謎の怪音騒動についてでした。
その音は数日間に渡り、獣のうなり声のような重低音で山村に鳴り響き、「まるで龍の鳴き
声のようだ」と注目を集め、ニュースを知った多くの人々が村に押し寄せました。インター
ネット上には、怪音とともに現地に群がる人々の様子が映し出された動画が複数アップさ
れました。
音の原因は特定されないまま、さまざまな憶測(地下洞窟から漏れた音である説、天変地異
の前触れ説、世界の週末説、等々)が飛び交いました。
いわゆるオカルト的なニュースではありましたが、私は当時、妙にその話題が気になってし
まい、続報がないか度々ネットで検索していました。
しばらくして音の正体は、専門家らが調査した結果「ウズラの一種の鳴き声が山に反響した
もの」であるというニュースが流れました。しかしその情報もまた、騒動を収めるためのフ
ェイクだという声も聞かれ、真相はよくわからないまま話題は埋もれていきました。
実際のところ、本当に調査の通りだったのかもしれないし、何か別の自然現象だったのかも
しれません。しかし、ネット上にアップされたいくつかの動画(それ自体の真偽もまた不明
ですが)からは、何かしらの見えない存在や、理解できない事象が起こっているという、あ
る種の期待感のようなものが伝わってきました。私は何度も映像を見ては思いを巡らし、わ
くわくしていました。
本作は、その村に群がり謎の音を聞く人々のネット画像を参考にして制作したものです。
描きながら、そもそも村の大地自体が龍の鱗のようにも見える気がしていました。
展覧会風景撮影:松尾宇人