龍の頭上で数遊び

狩野宏明

2023年制作
6M(24.2×41.0㎝)/油彩、白亜下地、綿布、パネル/2023年

作家コメント

山形県米沢市の笹野観音堂に施された龍の彫刻をモチーフとして、2 人の精霊が龍の頭上
で交流する様子を描いた。
2 人の精霊を繋ぐ帯には、「ティティウス・ボーデの法則」と呼ばれる数式が描かれてい
る。これは 18 世紀に提唱された法則で、太陽から各惑星までの距離を簡単な数列で表す
ことができるというものである。現在では科学的根拠を伴わない偶然の産物と見做されて
おり、世界の見えない結びつきや偶然の一致を楽しむ人間の心理の象徴として描いた。
周囲の幾何学図形は、西洋の数学が導入される以前の日本で用いられていた「和算」と呼
ばれる算術体系で使用された図形である。
日本の神社仏閣には、この和算を絵馬に記して奉納された「算額」がしばしば見られる。
数学の問題が解けたことを神仏に感謝し、一層勉学に励むことを祈願して奉納されたもの
であり、日々学び続ける喜びの象徴として描いた。
画中の図形の円は56個描かれており、ギャラリー広田美術の55周年を記念するととも
に、新たな未来へ向かう意味を込めた数とした。

展覧会風景撮影:松尾宇人