双子のサッフォー

狩野宏明

2025年制作
油彩、テンペラ、金箔 ミューグラウンド、綿布、パネル/55.0×49.0㎝/2025年

作家コメント

古代ギリシャの女性詩⼈サッフォーをモチーフとして、⼈と⼈の親密性や 相互理解をテー マに描いた。

サッフォーは、ギリシャのレスボス島で女性たちに音楽や詩を教え、彼女 たちを主題とした 美しく官能的な詩を創作した。
同性愛や失恋による⾃殺 など、さまざまな伝説が⽣まれ、ギ ュスターヴ・モローの絵画やボード レールの詩をはじめ、広く芸術作品の着想源となっている。
2024 年の年末に5年ぶりの海外旅⾏でフランスを訪れ、サッフォーを主題 として制作された作品に興味を惹かれた。

本作の⼈物像のポーズは、オルセー美術館所蔵のジャン=ジャッ ク・プラ ディエ《サッフォー》(1852年)をモチーフにしている。
多彩な伝説に彩られ、劇的な図像や物語の源となったサッフォーについて 調べると、彼女の詩は、⽇常話している⽅⾔で率直に個⼈的な内容を歌っ たものが多いことが分かり、⾔葉や 思いを直接、素直に伝えることの重要 性を現代の私たちに⽰唆しているように思えた。

本作で⼈物が向かい合って額をつけるポーズは、対話による⼈と⼈の親密 性や相互理解を連 想させることを意図した。
背景左に描かれた電話機は、 離れた場所に思いや情報を伝えるテ クノロジーの歴史を表す。
画⾯奥の左 右の扉の向こうには、19 世紀フランス象徴主義の画 家ギュスターヴ・モローと、19 世紀イギリスのラファエル前派の影響を受けたシメオン・ ソ ロモンによるサッフォーの絵画を引⽤している。