作家コメント
シリカの星には、雨の日が二つありました。 ひとつは水の雨、もうひとつは、空が眠る夜にだけ降る"ガラスの雨"。 青い雫はゆっくり落ちて、地面に触れるとパリン、と小さな鈴のように鳴って砕け ます。 星じゅうが、透明な音で満たされる夜です。 その星のはじに、卵のかたちをした小さな子どもがいました。 まだ世界に出るには少しだけ疲れていて、胸の奥では赤い灯りがゆらゆら揺れてい ます。 それは命の火で、昨日まで歩いてきたがんばりの炎でした。 そんな子どもを見つけたのが、大きい大きい宇宙ネコでした。 宇宙ネコは言いました。 「おいで。きょうは、我のおなかで眠るとよいよ。」 宇宙ネコのおなかは、ふかふかで、あたたかくて、バフッと雪雲に飛びこんだとき みたいな匂いがしました。 毛はやわらかくて、ときどきチクッとしました。 そして、ネコが息をすったりはいたりするたびに、子どもの体にもゆっくりとした 波が伝わって、どんどん安心が広がっていきます。 あたりではガラスの雨が星を奏でていました。 パリン、パリン。 それは銀河鉄道がはしる白鳥区産でとれる、鳥のお菓子を思い出す透きとおったひ びきで、世界を遠くに押しやる音でした。 そして宇宙ネコは、まあるくなった子どもを見つめながら、そっとつぶやきました。 「君は遠くから来たんだね。 ...今日みたいな夜を我は福の夜って呼んでるんだ。 空と一緒に眠る夜。 ゆっくりおやすみ。」 こうして子どもは、世界でいちばんやさしいお腹の中で眠り、 ほんの少しだけ、もう一度生まれなおす準備をしたのでした。
シリカの星には、雨の日が二つありました。
ひとつは水の雨、もうひとつは、空が眠る夜にだけ降る"ガラスの雨"。
青い雫はゆっくり落ちて、地面に触れるとパリン、と小さな鈴のように鳴って砕け ます。
星じゅうが、透明な音で満たされる夜です。
その星のはじに、卵のかたちをした小さな子どもがいました。
まだ世界に出るには少しだけ疲れていて、胸の奥では赤い灯りがゆらゆら揺れてい ます。
それは命の火で、昨日まで歩いてきたがんばりの炎でした。
そんな子どもを見つけたのが、大きい大きい宇宙ネコでした。
宇宙ネコは言いました。
「おいで。きょうは、我のおなかで眠るとよいよ。」
宇宙ネコのおなかは、ふかふかで、あたたかくて、バフッと雪雲に飛びこんだとき みたいな匂いがしました。
毛はやわらかくて、ときどきチクッとしました。
そして、ネコが息をすったりはいたりするたびに、子どもの体にもゆっくりとした 波が伝わって、どんどん安心が広がっていきます。
あたりではガラスの雨が星を奏でていました。
パリン、パリン。 それは銀河鉄道がはしる白鳥区産でとれる、鳥のお菓子を思い出す透きとおったひ びきで、世界を遠くに押しやる音でした。
そして宇宙ネコは、まあるくなった子どもを見つめながら、そっとつぶやきました。
「君は遠くから来たんだね。 ...今日みたいな夜を我は福の夜って呼んでるんだ。 空と一緒に眠る夜。 ゆっくりおやすみ。」
こうして子どもは、世界でいちばんやさしいお腹の中で眠り、 ほんの少しだけ、もう一度生まれなおす準備をしたのでした。