SIO2 宇宙ネコ あったかい

大島真由美

2025年制作
25.6×20.5㎝、紙本彩色、2025年

作家コメント

シリカの星には、雨の日が二つありました。
ひとつは水の雨、もうひとつは、空が眠る夜にだけ降る"ガラスの雨"。
青い雫はゆっくり落ちて、地面に触れるとパリン、と小さな鈴のように鳴って砕け ます。
星じゅうが、透明な音で満たされる夜です。
その星のはじに、卵のかたちをした小さな子どもがいました。
まだ世界に出るには少しだけ疲れていて、胸の奥では赤い灯りがゆらゆら揺れてい ます。
それは命の火で、昨日まで歩いてきたがんばりの炎でした。

そんな子どもを見つけたのが、大きい大きい宇宙ネコでした。
宇宙ネコは言いました。
「おいで。きょうは、我のおなかで眠るとよいよ。」
宇宙ネコのおなかは、ふかふかで、あたたかくて、バフッと雪雲に飛びこんだとき みたいな匂いがしました。
毛はやわらかくて、ときどきチクッとしました。
そして、ネコが息をすったりはいたりするたびに、子どもの体にもゆっくりとした 波が伝わって、どんどん安心が広がっていきます。
あたりではガラスの雨が星を奏でていました。
パリン、パリン。 それは銀河鉄道がはしる白鳥区産でとれる、鳥のお菓子を思い出す透きとおったひ びきで、世界を遠くに押しやる音でした。
そして宇宙ネコは、まあるくなった子どもを見つめながら、そっとつぶやきました。

「君は遠くから来たんだね。 ...今日みたいな夜を我は福の夜って呼んでるんだ。 空と一緒に眠る夜。 ゆっくりおやすみ。」

こうして子どもは、世界でいちばんやさしいお腹の中で眠り、 ほんの少しだけ、もう一度生まれなおす準備をしたのでした。