天球の音階

狩野宏明

2022年制作
15F (65.2×53.0㎝)/ 油彩、箔、パネル、アクリル 石膏地、寒冷紗/2022年

作家コメント

17 世紀の天⽂学者ヨハネス・ケプラーが作曲した『惑星の⾳楽』に着想を得て制作しまし た。古代ギリシャ以来、⻄洋では伝統的に、宇宙が⾳楽的に調和しているという世界観があ り、ケプラーの『惑星の⾳楽』も、惑星の運動を和⾳と対応させて作られました。画中の下 ⽅にケプラーの『惑星の⾳楽』の楽譜を描き、画⾯全体を覆うジラフ・ピアノを背景として、 ⼭形に伝わる巫⼥の⾵習で使われる数珠とそれを扱う⼈物像そして遊ぶ幼児の幻影や⼩さ な⽇本⼈形などを配置し、この世界の⽬に⾒えない存在の連関を表現することを試みまし た。画⾯右上の⼀⾓獣は、⼀⾓獣から逃げる男が⻯のいる井⼾に落ちるという寓話をもとに 作られた中世ヨーロッパのレリーフの⼀部を引⽤したものです。この寓話では、死の象徴で ある⼀⾓獣から逃げた男が、⻯や蛇のいる井⼾に落ちて危機的状況が重なっていく様⼦が 語られています。この寓話をもとに、誰にでも訪れる死を受け⼊れ、⼀度きりの⼈⽣をより 良く⽣きるための象徴として⼀⾓獣を描きました。画中のアーチ状の建築物の奥には、作者 ⾃⾝の故郷の⾵景が描かれています